2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

のぞきこむ

頭のなかで起こっている問題と現実に起こっている問題を きちんと区別して対処しなさい。あなたはそれらをゴチャゴチャに しているのよと、ミセス・ヤーソンは言う。 内と外の混同か、カッブを葡萄の蔦の描かれたソーサに戻して、 デックスは頷く。 夢を夜見…

月の湖

宇宙で水は液体なのか、固体なのか考えている時左側の 路地から飛び出してきた車に足を踏み潰された。 そんな奇妙な書き出しの小説を図書館で昨日借りた。 主人公の足は治ることはなくカーボン製の義足を使って歩行する ことになる。そして、彼らと戦う事に…

太陽が燃えたことはただの一度もない

初めて見たときから気にいらない奴だった。 いつも少しうつむき加減でトボトボと歩いて来ては、 だまって角の席に座って本を読み出す。 こちらは入ってくるたびに必ず笑顔を作り、挨拶している。 また今日も奴がやって来た。 こちらは明るく挨拶する。 ちら…

てまえのひとみ

抽斗の奥に大切にしまってある一枚の風景がある。 いぜんにはそんざいしていた街だから大切なのでは、ない。 今でも何変わりなくその土地の上にあったとしても、あまり関係ない。 だいたいその風景が、何も写っていない物であったとしてもその風景はやはり、…

リンク先は消滅すでにしております

お名前をどうしても思い出せないのです。 何というお名前でしたでしょうかと、その人に尋ねた。 わたしの名前が御知りになりたいのですか、とその人は言う。 ええ、以前にはとても良くアナタと会っていたのを覚えています。 何度と無くお話したり、一緒に何…

まっかちん

その一 その気持ちのよい日の午後に、 ぼくたち仲良し3人は仲良く日なたぼっこをしていた。 その二 君たちは、もう行かなくちゃと言い残して突然に立ち上がった その三 どこかに向かって泳ぎだしてしまった その四 何処に向かって行ってしまったのだろう。 …

足もとに浮かぶ星

梅雨時になり毎日ジメジメとした日がづづきますが、 いかがお過ごしですかと、ブラスチックのトランジスターラジオから 女性アナウンサーがカラカラに乾いた声で挨拶する6月の午後。 日差しが一年で一番強くかんじられるは、6月。 昼の時間が夜の時間よりも…

くっついていててて

新しいお家を買おうと思うの。 おうち?タニシはチューインガムを飲み込みそうになってチコを見た。 そこに誰が住むのだろうと思った。 白い壁で赤い屋根のオ・ウ・チ。 天上からぶら下がっているハエ取り紙を見上げながらチコは、呟いた。 その家は何処にあ…

濃い色となって響く音

財布の中が、アルミニウムの硬貨だけになってしまう時。 それは暖かなボカボカとした日差しの下平らな道を進んで行くと突然、道がなくなって 草がボウボウ生えた原野に行き着いてしまう感じなのだろうか。 膝ががくがくして僕はその場に、しゃがみこんでしま…

晴れた6月

真上から強い光を太陽が放つので、木陰に逃げ込みたくなることがたまにある。 とくに、まだ完全に夏毛に生え変わる前のこの季節には。 しばらく何も食べてないことを腹がつげているのだけれども、四本の足はしっかりと 地面の土にふんばって、歩を先に進めて…

取り残される虫

思い出すところがある。 そこは河のそばらしい、水が流れる音が聞こえてくる。 足をすこし緩めて、頭のなかの風景に目を凝らしてみる。 振り返る、 光は横から照らす、朝なのだろうか。 それとも夕暮れかもしれない。 見おろしてベットの上で四回目の梅雨時…

のどが渇いていた。 朝、宿を出る前に水を一口飲んでから、 かれこれ半日以上歩き通しだった。 いま何という場所を通過しているのか、皆目見当がつかないのだが、 おそらくこのまま進んでゆけば日が暮れる前に次の宿場に辿り着くだろう。 そして、 明後日に…

かわはかわかず

川は流れていつでも海に到着するばかりでない。 水はひくい方へ常に流れて行くとしても。 そこは海面よりもひくいところ。 ここを流れるみずは、どこへ流れていけばよいのだろう。 みずは、だからみずたまりをつくり沼となる。 海にいけないあたりのみずたち…