2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

0.01

彼女自身の体の中を通っていくうちに取捨選択して身につけることが 出来た物事だけしか彼女に理解することができない。 彼にはそのことが理解らない、だから彼とは決して分かり合うことはない。 と、彼に向けて言葉をはっしても無駄だからじっと彼を彼女は見…

なっ。さっしてくれよ

わたしには解らない。 あなたが言う辛い赤い実が、 苦い黄色い実にわたしには、思う。 あなたが大好きなジビーテの歌声が、 凍りつく真夜中の厳冬に聞こえる風音のようで、 わたしは好きではない。 そんな時にあなたは言う。 なっ。さっしてくれよ。 わたし…

Should I stay or should I go

何処へも続いていない道にたどり着く。 突然道は終ってしまう。 道とは多くの人々が歩いている跡、 多くの人がある時期に歩いている跡、 人々がそこを歩かなくなれば、たくさんの人たちの生活に必要とされた道でも、 道は道では失くなり平原へと戻って行く跡…

プルトップ

缶ビールを手渡してくれた時、ほんの一瞬君の指の腹が僕にふれる。 僕の手には沢山の水滴が浮いている良く冷えたアルミ缶がのこる。 プルトップ・タブを引き剥がし、缶を腰掛けたベンチの脇に置く。 剥がしたタブのベロをバネにしてタブを空中へ飛ばす。 ク…

シャッポ

そんなろくでもない帽子なんか脱いで竈の火でジリジリと焼いちゃいなさい、 オイラに彼女は言う。 とても背の高い、真っ黒だけど光りがあたる角度によって虹色に光る(烏の羽のように)そんな帽子をオイラが被っていると彼女は言う。 初めて彼女と出会って話…

ライムグリーン

初めて彼の家に行った時ドロシーは、 そこがとても懐かしい感覚のわきあがる場所であることにとても、驚いた。 ドロシーと彼女が呼ばれるのは、樫で出来た扉の中で、出会った人たちの間だけだ。 両親も双子の姉も※※※ちゃんと彼女のことを呼ぶ。 そして、彼も…

カプサイシン

生まれたばかりで柔らかく新鮮な葉を、 むしゃむしゃむしゃむしゃと僕はまた、食べた。 左側の耳はすこし内にたれさがっていて、跳ねるとブラブラと 揺れる。 短い尾っぽの先には夕暮れのススキのようなオレンジ色の毛が、 僕には生えている。 あの丘のむこ…

日傘の咲く街

この街で僕はまだ雨が降るのを、一度も経験したことがない。 カラフルで色々な太さで複雑にからまる工場のパイプの隙間から毎朝、 太陽はニヤニヤしながら必ず顔を出してくる。 昨晩さあ、あちら側で双子のクジラの姉妹から面白い話きいたんだよ、 不幸せの…

入口もしくは、出口

どうやらここが、城への入口らしい。 日がまだある時にここまでやってこれて良かったと、 Mは思った。 重い山羊革の靴を履き、ザックを背負って旅たった日、 辺りは一面凍りついていた。 乾いた雪をギュッギュッと踏みしめ、城にむけ足を踏み出した頃を ふと…