入口もしくは、出口
どうやらここが、城への入口らしい。
日がまだある時にここまでやってこれて良かったと、
Mは思った。
重い山羊革の靴を履き、ザックを背負って旅たった日、
辺りは一面凍りついていた。
乾いた雪をギュッギュッと踏みしめ、城にむけ足を踏み出した頃を
ふと思う。
城に同じように向かっていると樫花亭で話していたAや、
城へ向かったままの父が行方不明なので、
どこかで合う機会が有れば、孫ができたと伝えて欲しいと、
言っていたSのことを思いだした。
静がだ。
高いところから鳥が鳴くのがかすかに聞こえてくる。
ときおり、風がゆるやかにふくと葉がカサカサと音をたてるだけだ。
Mは、目をつぶりしゃがみこんでしまった。