プルトップ
缶ビールを手渡してくれた時、ほんの一瞬君の指の腹が僕にふれる。
僕の手には沢山の水滴が浮いている良く冷えたアルミ缶がのこる。
プルトップ・タブを引き剥がし、缶を腰掛けたベンチの脇に置く。
剥がしたタブのベロをバネにしてタブを空中へ飛ばす。
クルクルと回転してタブは空に向かって弧をえがき、肩まで伸びている君の髪の左側にぶつかって落た。
友人たちとの会話をつづける君はふりむかない。
アルミ缶を口にはこんでビールを一口飲む。
見上げてみる空には端に一つだけ小さな雲がこそっと浮かんでいる。
芝生に落ちたタブは僕が組んだ足を変える時一瞬輝いて見えた。
まだ向こうを向いたままの君を見ながらまた一口僕はビールを飲む。