てまえのひとみ

抽斗の奥に大切にしまってある一枚の風景がある。

いぜんにはそんざいしていた街だから大切なのでは、ない。

今でも何変わりなくその土地の上にあったとしても、あまり関係ない。

だいたいその風景が、何も写っていない物であったとしてもその風景はやはり、

私にとっては欠けがえのない風景になるに違いない。

何故ならば、誰の目がその風景を探しだして形として固定しようと感じたか。

そのことだけが大切な風景だからである。

その風景を写すための手前の人と、その人の立っている世界が大切だったからである。

 

  「明るい闇の手前で」 ミヒャエル・レスターソン著 より

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