うさぎ
トモコは小学4年生の時、
うさぎの面倒見る、飼育係だった。
二人のお姉ちゃんと、一人のお父ちゃんがトモコの家族だった。
トモコは一番最初に学校から家に戻るので、黄緑色の紐に鍵を
つないでぶら下げている。
トモコちゃんのそばに寄ると飼育小屋のニオイがする、と言って
みんなは笑う。
だから、うさぎのいる飼育小屋の中に入ってみんなを笑わせた。
餌のキャベツも食べてみろよ、男の子がはやしたてる。
いつも給食二回おかわりしているじゃないか、お腹すいているんだろう。
ほら、と金網の間から人参を差し込んできた。
人参をガシガシとトモコはかじった。みんなは、大声をあげて笑った。
ガシガシと人参を噛りながら大きくトモコも笑い声をたてた。
ガシガシガシガ。
★
わたし、みんなの飼育係だったんだ。
メンソールの細いタバコの先がホタルみたいにひかって、彼女の横顔を少しだけ照らした。