夜はやさい
カウンターに並んでアルコールを飲んでいる。
わたしは、ダイキリ。彼は、ウゾー。
言葉があるから、
うまくコミニュケーションがとれるはずだった。
そう信じていた彼はとても、くたびれてみえる。
わたしは、黒い一匹の雌猫と一緒に住んでいる。
一度も彼女と言葉を交わし合ったことはない。でも、
彼女はとても良く私の気持ちを感じてくれるし、
わたしも彼女をとても大切に思っている。
白く濁った液体を飲み干して、ため息をつく彼は、
先週から一人きりで暮らすようになった。
6年間、日本語で話し合っていた妻は、出て行ってしまった。
彼女との間で言葉をつかって、伝え合って気づいたのは、
僕らは一緒にいられないってことが結論だった。
僕らが不完全であって、言葉を不完全にしか使うことができなく、
そもそも不完全な気持ちを固めてしまって、それが良い事だと思っていた。
わたしの黒猫は今頃、
くうくうと寝息を立てて私達の夢を黙って見ているだろう。