壁ねこ

君がたった今一口の刀を手にしたら何をすると、男が尋ねる。

君は男の話んかちっとも聞いてやない。だってゼンハイザーの

カナルタイプイヤホンで、周りの音は一切遮断してハルシノゲン

を聞いていたのだから。

男の話した言葉のあと、酒の匂いが周りに広がる。

君は男の方に頭を向け、ニッコリと笑いかける。

そして、ジーンズの右前のウォチポケットからコインを数枚出し、

男の前に並べて置いた。

男は立ち上がり、少しよろけながら立ち去ってしまった。

 

富士山晴男 著「侠客」より

 

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