か る イ お も イ

いつもは 安いエイティー・セブンをたのむニックがその日は違った。

なぜ、いつも通りのものを注文しないで、店で一番高いブルートセッグなんて

酒をたのむのかと、僕はたずねた。

未来を見てきたのだとニックは答えた。

どんな未来だったのかと思ったが聞くのはやめて、僕は自分グラスの中のものを

飲み干した。

 

俺はリタイヤしたあとの為に金をためていたんだ。その金で老後は優雅に暮らすつもりだった。 ニックは二杯目のブルートセッグを飲みながら話し始めた。

だけれども、今日見てしまった未来は違っていた。

俺は認知症になって自分が誰なのか、糞をどこでしたらいいかもわからない状態で毎日ベットの上にいる。それが俺の未来だった。

 

だから、今夜この店で一番うまい酒が飲みたくなったんだと思う。

 

その夜からどんな酒も、ニックには先週まで飲んでいたエイティー・セブンより美味い酒になることはなくなった。

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